導入事例CASE07:
システムのクラウド化と購買業務の効率化

導入組織の概要とオンネット購買の関係

 

地方都市の総合病院(関西地区、300床規模、以下病院という)が導入先となっている。導入にあたっては情報システム部が全体調整を行い、購買管理部門が利用者の要件を採り入れた。

 

病院では既に病院向けに作られた購買システム(以下前購買システムという)が導入されていたが、更新時期を向かえることになった。更新は病院設置のサーバ機とOS更新のためであった。ただこの更新時に、10年程度前に開発した機能を0から再構築する提案だったため、業務資産が「新システムに継承できない点」に違和感があった様である。

 

開発環境はクラウド内に構築。開発は東京(当社)で行い、その内容を病院側から検証する方法で行った(リモート開発で実施)。

導入後6年(2024年現在)が経過している。その間、サーババージョンの更新、インボイス、電子帳簿への対応を行い、現在に至っている。

(当社の所感)

昨今の業務システム(販売、購買など)は、導入時点で「独自業務の適用」を行っても「OSとその上で動作するソフトウエア」が変更になった場合「独自機能の適用」が継承されない矛盾がある(継承されないので再開発となり、利用者負担になる。汎用機時代は継承された(但し、インストール作業費は必要))。

ただ「OSとその上で動作するソフトウエア」の変更もソフト提供側だけの責任とも言い切れず、悩ましいところである。当社はこの矛盾を最小化するために、インフラ部分をクラウド化している。また、プログラム環境は流行り技術(オープン技術の組み合わせ)については継続性を注視している。プログラムも機能別に分解して、技術の変遷が業務全体に影響しない様にしている。SQL文による業務ロジック作成は、時代変化が少ない点にも着目している。

システム構築の目的

システムに求める機能は「前購買システムの機能を全て「オンネット購買」に、過去データを含め引き継ぐこと」とであった。主な機能は以下のとおり。

  • ・年次計画(予算)に基づく購買とする(予算NOとの連携)
  • ・当年度計画は、次年度立案時に複写されること
  • ・他システムとデータ連携されること(入院食、医薬品など)
  • ・検収支払い(相手先請求書を作成)とする
  • ・会計パッケージに仕訳接続されること
  • ・システムのクラウド化

その後、以下の要件が追加された

  • ・インボイス制度への対応(適格事業者番号の管理)
  • ・電子帳簿保存法への対応(発注書、相手先用請求書のPDF化)

システム化のポイント

クラウドで動作すること
システムの開発、ステージング環境と本番環境をAzure上に構築した。これにより開発側と利用者側が開発途中で実際画面を共有しながら作業できた。また、これまでの病院設置のサーバ性能に比べ低い性能の仮想サーバとDBで動作することが分かった。サーバ・DB性能の変更が柔軟にできるためである。病院設置のサーバ償却費と比較したコストは1/3以下となった。バックアップ作業も不要となった。
前購買システムの機能・データ調査
全システムの機能はDB情報と画面からほぼ明確化できた。その上で、データ項目をどう扱うかのヒヤリングを行った。プログラムソース解読は不要であった。よく「スパゲッティ状態だから分からない」「AI、RPAなどのツールで簡単にシステムが作成できるので、分析不要」などがいわれるが、「目視分析」と言語実装の方がよほど効率的で早いと感じている。
年次計画との連動
例えば「X線室の増設」「非常用発電機の導入」など、予算管理する購買に対応する必要があった。幸い「オンネット購買」には、プロジェクト管理という機能があり、それを利用した。このプロジェクト管理は、稟議、予算など種々の番号管理を想定していたので、予算番号管理も当然可能であった。また、新年度予算立案は今年度予算を転写して継承する機能が必要であったが、その部分はデータ複写機能を新たに作成した。
相手側請求書出力と納品処理
これまで「検収通知書による、相手先請求書を待たずに支払いを行う処理」(以下検収通知書払いとういう)は、何社か経験していた。このことは購買システム導入の最大の業務効率化ポイントと考えている。月末の相手先請求書との突合せ業務の排除が出来るからである。しかし検収書払い方式の採用は、あまり進んでいない実際があった。今回は「相手先の請求書をシステムで作成し、捺印を貰う」方式としていた。これは検収通知書払いと同じであるが、相手先の請求書払いと見かけ上同じとなる。抵抗感が無いだろう。いいアイデアと思っている。
他システム納入情報連携
今回の例では、入院給食、医薬品は他システムからの受領・検収情報の取り込みが必要であった。前購買システムでも行われていたためデータフォーマットを変更せずに取込機能を作成した。データ転送はローカルからクラウドに対して行う必要があったが、リモートファイル接続としたので、これまでのローカル処理と利用感の違いは発生しなかった。
会計システムへの仕訳接続
市販会計システム(勘定奉行)に対して、仕訳データ接続機能を準備した。「オンネット統合業務」には勘定科目マスタがあるので、そのデータを勘定奉行の勘定科目に合せた。接続する仕訳データは各社なりの処理が必要である。消費税仕訳の方法も異なる。「オンネット統合業務」には、SQL文で簡単にバッチ処理を作成する仕組み(SQLS)がある。検収データ、仕訳マスタ、発注先マスタから仕訳データを作成している。
インボイス制度への対応
通常、購買システムでの「相手先の適格請求書発行事業者登録番号」の管理は不要に見えるかも知れない。しかし、相手先請求書出力への印字で必要になった。発注先マスタに項目を設けた。
仮想PDFプリンタの導入
電子帳簿保存法などにより、発注書などの電子化が推進されている。「PCのPDF出力プリンタ選択でPDF出力対応可能」との意見もあろうが、そうはならない。「オンネット購買」で一括して、発注書、検収通知書、相手先請求書を出力すると、ボタン一発で、数十、百社の出力が完了する。それを自PCのPDFプリンタで出力すると一つのPDFファイルになってしまう。これでは配布できない。そこで、クラウド上に「PDF仮想プリンタ」を準備し、ボタン一発で、数十、百社のPDFファイルを配布先毎に作成する仕組みを準備した。

システム化の効果

業務の効率化
年次計画(予算)、発注、受領、検収、仕訳接続までの業務効率化と、相手先請求書発行による支払業務の効率化が図れた。
クラウド利用による機器管理業務からの解放
病院内でのサーバ管理業務(世代バックアップ)が無くなった事、機器老朽化更新時のハード交換が不要になった。
クラウド利用による機器コストの抑制
サーバ償却費、保守料管理費が大きく削減できた。
「維持利用契約」によるリモート保守体制の確立
システムの維持作業をリモートで、即時に行える様になった。また、システムの変更、拡張が継続的に行える様になった。